ずん
「ぐりとぐら」の作者が亡くなったのだ...って、25年でそんなに世界変わるものなのだ?
でぇじょうぶ博士
まあ、昭和10年から35年でやんすからね。アンデルセン童話が没収される時代から、高度経済成長期まで。まるでカタツムリが突如F1カーに乗ったようなもんでやんす。
やきう
ワイのスマホの寿命より短いやんけ。でも世界が変わるんか。
でぇじょうぶ博士
カタカナ名だからという理由で没収でやんす。今で言えば「英語のメニュー持ってるだけで逮捕」みたいなもんでやんすね。
ずん
そんな時代に子育てとか、考えられないのだ...
でぇじょうぶ博士
しかも教科書を自分で墨塗りさせられたんでやんす。昨日まで「生きる道しるべ」だったものを、自らの手で消すんでやんすよ。
やきう
メンタル崩壊不可避やろ。ワイなら引きこもるわ。
ずん
でも、そこから保育士になって、絵本作家になるって...すごいのだ。
でぇじょうぶ博士
まさに不死鳥でやんすね。ただし、その間のドブ川時代を忘れちゃいけないと息子さんは言ってるでやんす。
やきう
今の親水公園、インスタ映えスポットになっとるやろな。
ずん
え、あのドブ川が今カルガモいるの?逆にヤバいのだ。
でぇじょうぶ博士
そうでやんす。ゴミと異臭まみれだった川が、子どもが水遊びできる場所になったでやんす。まあ、過去を美化する人間の得意技でやんすけどね。
やきう
で、結局その過去忘れとるんやろ?人間チョロいな。
ずん
じゃあボクも苦労したことは全部忘れていいってことなのだ?
でぇじょうぶ博士
それは違うでやんす。苦労を忘れると同じ過ちを繰り返すでやんす。母親が「教科書墨塗り」世代だったから、子どもに本を与え続けられたんでやんす。
やきう
深いな。でもワイ、本読まんでもネットで十分やけどな。
でぇじょうぶ博士
その考え方こそが危険でやんす。情報が溢れすぎて、何が本当か分からなくなってるでやんす。昭和の人々は情報が制限されて苦しんだでやんすが、今は情報過多で苦しんでるでやんす。
でぇじょうぶ博士
簡単でやんす。自分の目と耳と、そして直接触れた経験でやんす。中川李枝子さんは保育士として子どもと向き合い続けたから、あれだけの作品が生まれたんでやんす。
やきう
ワイ、子どもと向き合うとか無理やわ。泣かれるし。
ずん
あれ?やきう、子どもいないのに泣かれるって...
やきう
...公園でベンチ座っとっただけで通報されかけたんや。
でぇじょうぶ博士
価値観が180度変わったでやんす。「お国のため」から「個人の幸せ」へ。「統制」から「自由」へ。そして「本の没収」から「本を子どもに与える使命」へでやんす。
やきう
でも今また統制の時代に戻りつつあるやろ。歴史は繰り返すんやで。
でぇじょうぶ博士
だからこそ、中川画太さんは「忘れてはいけない」と言ってるんでやんす。ドブ川がきれいになっても、ドブ川だった記憶を消してはいけないでやんす。
やきう
要するに黒歴史は消すなってことか。ワイの中学時代は消したいが。
でぇじょうぶ博士
個人の黒歴史と社会の黒歴史は別物でやんす。社会の記憶を消すと、同じ過ちを繰り返すでやんす。
やきう
まあ確かに。でも若い世代に「昔は大変やった」言うても響かんやろ。
ずん
だって想像できないのだ。教科書墨塗りとか、SFみたいなのだ。
でぇじょうぶ博士
だからこそ物語が必要なんでやんす。「ぐりとぐら」みたいな優しい世界を知ってるからこそ、その裏にある厳しい現実が見えてくるでやんす。
やきう
深読みしすぎやろ。ただのネズミの料理漫画やんけ。
ずん
ネズミじゃなくて野ネズミなのだ!そこ重要なのだ!
でぇじょうぶ博士
...そこはどうでもいいでやんす。
やきう
で、結局何が言いたいんや?過去を忘れるなってだけか?
でぇじょうぶ博士
そうでやんす。特に、今の便利で清潔な環境は、過去の混乱と汚れの上に成り立ってるということでやんす。
やきう
重い話や。でもワイらの世代、もう次の混乱待ったなしやろ。
でぇじょうぶ博士
その可能性は高いでやんす。だからこそ、中川李枝子さんのような「時代を生き抜いた人」の記憶が貴重なんでやんす。
ずん
じゃあボクも今のうちに本読んでおいた方がいいのだ?
でぇじょうぶ博士
当然でやんす。ただし、ずんは読む前に積むでやんすけどね。
やきう
積読は現代の教科書墨塗りやな。自分で読めなくしとる。
ずん
うっ...それは言わないでほしいのだ...ボクだって頑張って生きてるのだ...ただ、頑張る方向が斜め上なだけなのだ!