ずん
「統合失調症の人が書いた小説が傑作って、それって本当に読めるものなのだ?」
でぇじょうぶ博士
「むしろ、狂気と正気の境界線上でこそ、真の芸術が生まれるでやんす。ゴッホもニーチェも、みんな頭のネジが何本か外れてたでやんすからね。」
やきう
「ワイ、同じ出来事を7月と11月に2回体験とか、完全にバグっとるやんけ。」
でぇじょうぶ博士
「それが面白いでやんす。『事実』と『真実』は違うという話でやんすよ。彼女にとっては両方とも『真実』でやんす。」
ずん
「じゃあボクが『昨日100万円拾った』って2回言えば、それも真実になるのだ?」
やきう
「ならんわアホ。お前の妄想と統合失調症は別モンや。」
でぇじょうぶ博士
「しかも主人公は強迫性障害も併発してて、歩数や咀嚼回数を執拗に数えるでやんす。服を30回も脱ぎ着しないと家を出られないでやんす。」
ずん
「30回!?それ、出かける前に一日終わっちゃうのだ!」
やきう
「そもそも、そんな症状抱えながら小説書けるんか?ワイなんて健常者のくせに何も書けへんぞ。」
でぇじょうぶ博士
「だからやきう君は引きこもりニートなんでやんす。彼女は画家兼作家でやんす。」
でぇじょうぶ博士
「確かにホラーでやんすが、周りの人たちが信じられないくらい良い人ばかりでやんす。特に恋人のアバリンは底抜けに優しいでやんす。」
やきう
「はぁ?統合失調症の彼女を支えるとか、聖人か何かか?ワイなんて健康な女でも面倒くさいのに。」
ずん
「やきう、お前に彼女なんかいないだろうが...」
でぇじょうぶ博士
「まあまあ。本作の魅力は、『だったかもしれない』を連呼する独特のリズム感でやんす。人魚姫や白鯨、不思議の国のアリスなど、様々な作品が連環していくでやんす。」
ずん
「それって結局、話がまとまってないってことじゃないのだ?」
やきう
「せやな。ワイも酔っ払った時そんな感じになるわ。『あれ、これ昨日も話したっけ?』みたいな。」
でぇじょうぶ博士
「それはただの二日酔いでやんす。本作は意図的に構築された混沌でやんす。記憶の曖昧さと幻想が溶け合って、読者を不安定な世界へ引き込むでやんす。」
ずん
「なんか難しそうなのだ...二段組で分厚いんでしょ?」
やきう
「お前、どうせ最後まで読めへんやろ。積読確定や。」
でぇじょうぶ博士
「でもやんすね、統合失調症の家系で、母も祖母も自殺してるという設定は重いでやんす。主人公も同じ運命を辿るのでは...という不安が常に付きまとうでやんす。」
やきう
「しかも裸の女エヴァとか出てくるんやろ?完全にホラーやんけ。」
でぇじょうぶ博士
「エヴァは亡霊かもしれないし、狼かもしれないし、人魚かもしれないでやんす。あるいは名付け得ない存在でやんす。」
やきう
「わからんのが怖いんやろが。ワイの人生みたいなもんや。」
でぇじょうぶ博士
「やきう君の人生は単に無計画なだけでやんす。本作の曖昧さとは本質的に違うでやんす。」
ずん
「でもさ、2025年のベスト3に入るってことは、これから色んな人が読むってことだよね?」
やきう
「せやな。で、みんな『意味わからん』言うて投げ出すんや。」
でぇじょうぶ博士
「いやいや、むしろこの手のイメージの連環が好きな人には堪らない作品でやんす。ル=グウィンを引用するあたり、文学的素養も高いでやんす。」
やきう
「知らんのかい。『ゲド戦記』書いた人やで。お前ほんまに無知やな。」
でぇじょうぶ博士
「ル=グウィンは『ファンタジーは事実ではないが真実である』と言ったでやんす。この小説はまさにその体現でやんす。」
ずん
「つまり、嘘だけど本当ってこと?矛盾してないのだ?」
でぇじょうぶ博士
「やきう君、もう少し建設的な意見を言うでやんす。」
ずん
「でもさ、統合失調症の人の『真実』を追体験するって、読者も少し狂気に触れるってことだよね?」
でぇじょうぶ博士
「その通りでやんす!まさに読書体験として類稀なものになるでやんす。安全な場所から狂気を覗き見るスリルでやんす。」
やきう
「ワイは現実で十分狂気に満ちとるから、小説でまで体験したないわ。」
ずん
「やきう、お前の狂気は単なる社会不適合なのだ。」
でぇじょうぶ博士
「本作は、数字への執着も特徴的でやんす。十一歳、九十九歳、十六歳、百四歳...全部が意味を持つでやんす。」
ずん
「数字ばっかり出てきたら、数学の教科書みたいになっちゃうのだ!」
やきう
「いや、それが逆に不気味なんやろ。普通の人は歩数なんて数えへんからな。」
でぇじょうぶ博士
「強迫性障害の症状でやんすね。日常の些細なことに囚われて、普通の生活ができなくなるでやんす。」
ずん
「でもさ、そんな主人公に恋人がいるって、希望があるってことだよね?」
やきう
「せやな。ワイなんて健康なのに彼女おらんし...」
でぇじょうぶ博士
「やきう君、それは性格の問題でやんす。」
ずん
「アバリンっていう恋人、トランスジェンダーの女性なんだって。多様性の時代なのだ!」
やきう
「多様性とか言うとるけど、結局みんな自分のことで精一杯やろ。他人のこと考える余裕ないわ。」
でぇじょうぶ博士
「ところが本作では、周りの人たちがみんな主人公を支えようとするでやんす。理想的な人間関係でやんす。」
やきう
「おらんやろ。これもまた『真実』であって『事実』やないんや。」
でぇじょうぶ博士
「鋭いでやんすね、やきう君。確かに、この優しい人々も主人公の『真実』かもしれないでやんす。」
やきう
「それはさすがにネタバレすぎるやろ...読んで確かめるしかないな。」
でぇじょうぶ博士
「本作は二段組で分厚いでやんすが、一度読み始めたら独特のリズムに引き込まれるでやんす。『だったかもしれない』の連続が心地よいでやんす。」
ずん
「心地よい...のかなぁ?不安になりそうなのだ。」
やきう
「不安になるのが楽しいんやろが。ジェットコースター乗るようなもんや。」
でぇじょうぶ博士
「ただし、このジェットコースターは終わりがどこかわからないでやんす。読後もずっと心に残り続けるでやんす。」
ずん
「それって...トラウマってことじゃないのだ?」
でぇじょうぶ博士
「2025年のベスト3に入る理由が、そこにあるでやんす。簡単に消化できない、何度も反芻したくなる作品でやんす。」
ずん
「でもボク、簡単に消化できる作品の方が好きなのだ...!」
やきう
「お前、マックのハンバーガーばっか食っとるタイプやな。」
でぇじょうぶ博士
「たまには高級フレンチも食べるべきでやんす。本作はまさに文学のフルコースでやんす。」
でぇじょうぶ博士
「結論として、本作は統合失調症という難しいテーマを、芸術的に昇華させた傑作でやんす。読むのに体力は要るでやんすが、その価値は十分にあるでやんす。」
ずん
「わかった!じゃあボク...Amazonのレビューだけ読むのだ!」