# ディスカッション
ゾーラン・マムダニ演説を巡る三者三様の視点
ずん
「ニューヨークで社会主義者が市長になるって、これアメリカ終わったんじゃないのだ?」
でぇじょうぶ博士
「終わるどころか、始まりでやんすよ。家賃凍結、バス無料化、普遍的保育。これは1930年代のニューディール政策の再来でやんす。おいらの分析によれば、生活費危機が極限に達したとき、人々は必然的に再分配政策を求めるでやんす。」
やきう
「ニューディールとか言うとるけど、結局ワイらの税金でニートに飯食わせるだけやろが。」
でぉじょうぶ博士
「むしろ逆でやんす。家賃が月8000ドルの富裕層から徴税して、二つも三つも仕事を掛け持ちする労働者を救うんでやんす。やきう君が引きこもりながら批判してる間に、街では9万人がボランティアで動いたでやんすよ。」
ずん
「でも博士、イスラム教徒の市長って大丈夫なのだ?テロとか起きないのだ?」
やきう
「ほらな、ずんでもそう思うやろ。グローバル・ジハードって広告流れとったしな。」
でぇじょうぶ博士
「それこそがマムダニ氏が闘っている偏見でやんす!イスラモフォビアを煽って分断するのは、億万長者たちの常套手段でやんす。実際、予備選では13%差で勝利し、市史上最多得票を記録したでやんす。つまり、有権者は信仰より政策を選んだんでやんすよ。」
ずん
「ふーん...でも家賃凍結とかしたら、大家さん困るんじゃないのだ?」
でぇじょうぶ博士
「200万人の家賃安定化物件入居者でやんすからね。確かに不動産オーナーは激怒してるでやんす。でもニューヨークでは15万人以上の公立学校生徒がホームレス状態なんでやんす。どちらを優先すべきか、答えは明白でやんす。」
やきう
「明白なわけあるかい。そんなん共産主義やんけ。次は私有財産も没収されるで。」
でぇじょうぶ博士
「やきう君、それは極論でやんす。マムダニ氏は民主的社会主義者であって共産主義者じゃないでやんす。資本主義の枠内で再分配を強化するだけでやんす。ちなみにFDRのニューディールも当時は『社会主義だ!』と批判されたでやんすが、結果的にアメリカ資本主義を救ったでやんすよ。」
ずん
「じゃあ、トランプ支持者もマムダニに投票したって本当なのだ?」
でぇじょうぶ博士
「本当でやんす。これが最も興味深い点でやんす。ブロンクスとクイーンズで右派シフトが起きた地域で、マムダニ氏は直接対話したでやんす。彼らは民主党に失望してたんでやんすが、『生活費危機への具体策』という共通項で再び取り込んだんでやんす。」
やきう
「それ票目当てのポピュリズムやろ。実現できるわけないわ。」
でぇじょうぶ博士
「ポピュリズムと民主主義の境界線は曖昧でやんすからね。ただし、彼は州議会議員として実績があるでやんす。単なる扇動家じゃないでやんすよ。むしろおいらが注目してるのは、彼の運動が『買えない民主主義』を体現してる点でやんす。」
でぇじょうぶ博士
「億万長者が何百万ドルつぎ込んでも、9万人のボランティアの力に敵わなかったんでやんす。これは Citizens United判決以降、金権政治に支配されたアメリカで極めて稀な事例でやんす。おいらの計算では...おっと、口癖が出たでやんす。」
やきう
「結局な、バラ撒きで票買っとるだけやん。財源どないすんねん。」
でぇじょうぶ博士
「おっしゃる通り、財源は課題でやんす。でも彼は『超富裕階級への課税強化』と明言してるでやんす。ビル・アックマンやケン・ランゴーンといった億万長者を名指しで批判してるでやんすからね。実現可能性は別として、その覚悟は本物でやんす。」
ずん
「でもさぁ、お金持ちが逃げ出したらニューヨーク終わるんじゃないのだ?」
やきう
「せやせや!企業も富裕層もフロリダに逃げるで。税収ガタ落ちや。」
でぇじょうぶ博士
「その脅しは何十年も繰り返されてるでやんすが、実際にはニューヨークから人は減ってないでやんす。なぜならネットワーク効果でやんす。ニューヨークという都市自体が持つ価値、つまり文化資本、社会関係資本は他では代替不可能でやんす。むしろ家賃高騰で中間層が流出する方が深刻でやんすよ。」
でぇじょうぶ博士
「これは実に戦略的な政策でやんす。ニューヨークのバスは全米で最も遅いんでやんす。無料化すれば利用が増え、渋滞も減り、結果的に速度が上がる。そして低所得層の移動の自由が保障されるでやんす。まさに『自由』の再定義でやんすね。」
やきう
「自由の再定義とか、カッコつけすぎやろ。ただの左翼のお題目や。」
でぇじょうぶ博士
「いえいえ、これは哲学的にも重要な転換でやんす。彼は『誰が自由を許されるのか?』と問うてるでやんす。新自由主義では自由とは『市場での選択の自由』でやんすが、マムダニ氏は『生存の自由』を主張してるでやんす。つまり...」
やきう
「要するに『金持ちから取って貧乏人にばら撒く』だけやろ。ロビン・フッドごっこや。」
でぇじょうぶ博士
「単純化しすぎでやんす。彼の演説で最も印象的なのは『権威主義者』という言葉でやんす。超富裕層を権威主義者と呼んだんでやんす。つまり、経済的不平等は民主主義そのものへの脅威だという認識でやんすね。」
ずん
「えっと...つまり金持ちは独裁者ってこと...なのだ?」
でぇじょうぶ博士
「ある意味そうでやんす。彼らは民主的プロセスを経ずに、献金という形で政治を支配してるでやんす。Citizens United判決で企業献金が無制限になってから、これが加速したでやんす。マムダニ氏の勝利は、その構造への反乱でやんすね。」
やきう
「反乱て...そんな大層なもんかいな。どうせすぐ妥協するで。」
でぇじょうぶ博士
「その可能性は高いでやんす。市長になっても、州政府や連邦政府、そして何より市議会との闘いが待ってるでやんす。ニューヨーク市議会は意外と保守的でやんすからね。おいらの予測では、彼の公約の30%も実現すれば御の字でやんす。」
でぇじょうぶ博士
「そうとも限らないでやんす。重要なのは、彼が『政治は変えられる』という希望を示したことでやんす。9万人のボランティアは、1月1日以降も活動するでやんす。これは運動の始まりに過ぎないでやんすよ。」
やきう
「運動運動ってうるさいわ。ワイは家でゲームしとる方がマシや。」
でぇじょうぶ博士
「まあまあ。ところで、彼の演説で『アデニ・チャイでも飲みましょう』という部分があったでやんすね。これはイエメンのミルクティーでやんす。つまり彼は自身のムスリムとしてのアイデンティティを隠すのではなく、むしろ誇りとして提示してるんでやんす。」
でぇじょうぶ博士
「しかしでやんすね、最大の懸念は治安政策でやんす。ニューヨークでは犯罪率上昇が市民の関心事でやんすが、彼はこの点をほとんど語ってないでやんす。『生活費が下がれば犯罪も減る』という間接的アプローチでやんすが、即効性には欠けるでやんす。」
ずん
「じゃあ、治安悪化したらマムダニのせいになるのだ?」
でぇじょうぶ博士
「そうでやんす。そして保守派メディアは『社会主義者の市長が都市を破壊した』と大々的に報じるでやんす。これはサンフランシスコやシアトルで既に見られたパターンでやんす。マムダニ氏にとって、治安は最大のアキレス腱でやんすね。」
やきう
「ほらな、結局失敗するんや。左翼の理想論なんてそんなもんや。」
でぇじょうぶ博士
「失敗を予言するのは簡単でやんすが、やきう君自身は何も行動してないでやんすよね。批判だけなら誰でもできるでやんす。」
やきう
「...行動せんでも批判する権利はあるやろが。」
でぇじょうぶ博士
「まあまあ。実は、おいらが最も興味深いと思うのは、彼の演説が80年以上前のFDRと同じ構造を持ってる点でやんす。『私欲と権力欲の勢力が主人に出会う』というフレーズをそのまま引用してるでやんす。つまり彼は、自分をニューディールの継承者として位置づけてるんでやんす。」
でぇじょうぶ博士
「いえいえ、これは政治的伝統の継承でやんす。米国の左派は常にFDRを参照点にするでやんす。なぜなら彼こそが、資本主義の枠内で最も成功した再分配政策を実現した大統領でやんすからね。マムダニ氏は『再びそれができる』と主張してるんでやんす。」
やきう
「でも時代が違うやろ。1930年代とは経済構造が全く違うで。」
でぇじょうぶ博士
「その通りでやんす。当時は製造業中心、いまはサービス経済でやんす。でも共通点もあるでやんす。極端な格差、民主主義への不信、そしてファシズムの台頭。ドナルド・トランプという存在が、まさにそれでやんす。」
ずん
「じゃあ、マムダニはトランプを倒せるのだ!?」
でぇじょうぶ博士
「市長レベルでは直接対決はないでやんすが、象徴的な意味は大きいでやんす。もしマムダニ氏が成功すれば、2028年の大統領選に向けて民主党左派の勢いが増すでやんす。逆に失敗すれば『やっぱり社会主義は無理だった』という烙印を押されるでやんす。まさに試金石でやんすね。」
やきう
「試金石とかカッコつけとるけど、要するにギャンブルやろ。ニューヨーク市民、アホやな。」
ずん
「やきう、それニューヨーク市民900万人敵に回したのだ。」
やきう
「...別にええわ。どうせワイはここから動かへんし。」
でぇじょうぶ博士
「やきう君の引きこもり宣言はさておき、実は日本への示唆もあるでやんす。日本も生活費危機、特に東京の家賃高騰は深刻でやんす。でも『家賃凍結』なんて政策を掲げる政治家は皆無でやんす。なぜでしょう?」
ずん
「えっと...日本人は我慢強いから...なのだ?」
でぇじょうぶ博士
「それもあるでやんすが、最大の理由は政治的想像力の欠如でやんす。『できない理由』ばかり探して、『やる方法』を考えないんでやんす。マムダニ氏の演説で繰り返されるのは『We can』でやんす。この楽観主義が日本には決定的に欠けてるでやんすね。」
やきう
「楽観主義とか、ただの現実逃避やろ。日本は日本のやり方があるんや。」
でぇじょうぶ博士
「その『日本のやり方』で少子化も格差も解決できてないでやんすけどね。まあ、やきう君のような保守派がいる限り、日本版マムダニは当分現れないでやんすが。」
ずん
「でもさぁ、バス無料化とか日本でやったら、満員で乗れなくなるんじゃないのだ?」
でぇじょうぶ博士
「鋭い指摘でやんす!実際、無料化は需要増を招くでやんす。だからこそ同時に供給増も必要なんでやんす。マムダニ氏は『インフラ整備』も掲げてるでやんす。バラ撒きだけじゃなく、構造改革とセットなんでやんすね。」
やきう
「構造改革て...結局金かかるやんけ。どこから出すねん。」
でぇじょうぶ博士
「だから超富裕層への課税でやんす。ニューヨークには億万長者が山ほどいるでやんすからね。ただし、彼らは優秀な税理士を雇ってるでやんすから、実際に徴税できるかは未知数でやんす。」
でぇじょうぶ博士
「そうかもしれないでやんす。でも、絵に描いた餅を見せることで、人々は初めて『餅が欲しい』と思うんでやんす。政治において、ビジョンを示すことそれ自体に価値があるでやんすよ。」
でぇじょうぶ博士
「まあ、マムダニ氏の『普遍的保育』政策は、実は経済的にも合理的でやんす。親が安心して働けば税収も増えるでやんす。少子化対策にもなるでやんす。これは投資でやんすね。」
でぇじょうぶ博士
「短期的には赤字でも、長期的にはリターンがあるという意味でやんす。でも政治家は次の選挙しか見てないでやんすから、こういう長期投資は嫌がるでやんすね。マムダニ氏が本当にそれを実行できるか、注目でやんす。」
やきう
「どうせ口だけで終わるで。政治家なんてみんなそうや。」
でぇじょうぶ博士
「その冷笑主義こそが、民主主義を腐敗させるんでやんすけどね。まあ、おいらも研究者として、マムダニ政権を観察するのが楽しみでやんす。成功しても失敗しても、論文のネタになるでやんすからね。」
でぇじょうぶ博士
「研究者の性でやんす。客観性が大事でやんすからね。ちなみに、おいらの予測では、マムダニ氏は1期で終わる可能性が高いでやんす。急進的すぎて反発を招くでやんすからね。でも、その1期が歴史を変える可能性もあるでやんす。」
やきう
「1期で終わるんやったら、やっぱり失敗やんけ。」
ずん
「でもさぁ、9万人もボランティアいたら、次も勝てるんじゃないのだ?」
でぇじょうぶ博士
「甘いでやんす、ずん君。運動の熱狂は続かないでやんす。実際に市政を運営し始めると、理想と現実のギャップに直面するでやんす。支持者も離れていくでやんす。これは左派政権の宿命でやんすね。」
やきう
「ほらな、結局そういうことや。理想論で政治はできへんのや。」
でぇじょうぶ博士
「でもでやんすね、政治に理想がなかったら、それはただの利権の奪い合いでやんすよ。マムダニ氏が示したのは『政治は変えられる』という希望でやんす。たとえ失敗しても、その種は残るでやんす。」
でぇじょうぶ博士
「革命の種でやんす。いや、言い方が過激でやんすね。改革の種でやんす。次の世代が、彼の挑戦を見て育つんでやんす。そして『自分もできる』と思うんでやんす。これが民主主義の連鎖でやんすね。」
やきう
「革命とか言い出したで。やっぱり危ない奴やんけ。」
ずん
「やきう、お前が一番危ないのだ。社会に出てないのに社会を語るとか。」
やきう
「...うるさいわ!ワイはワイの人生を生きとるんや!」
でぇじょうぶ博士
「まあまあ。実は、マムダニ氏の勝利で最も影響を受けるのは、民主党内部でやんす。バイデン路線の中道派と、サンダース=AOC路線の左派の綱引きが激化するでやんす。2028年の予備選は修羅場でやんすね。」
でぇじょうぶ博士
「政治は本来、修羅場でやんすよ。利害が対立する人々が、暴力ではなく言葉で闘う場でやんす。それが民主主義でやんす。マムダニ氏はその最前線に立ったんでやんす。」
ずん
「でも博士、結局マムダニって成功するのだ?失敗するのだ?」
でぇじょうぶ博士
「それは『成功』をどう定義するかによるでやんす。全ての公約を実現することが成功なら、おそらく失敗でやんす。でも、政治の可能性を広げることが成功なら、彼は既に成功してるでやんすよ。」
でぇじょうぶ博士
「曖昧さこそが現実でやんすからね。白黒つけたがる人は、複雑な世界を理解できないでやんす。やきう君のようにね。」
ずん
「二人とも落ち着くのだ!それより、ボクが知りたいのは、マムダニが市長になったらニューヨークに旅行しやすくなるのかってことなのだ!バス無料だし!」
でぇじょうぶ博士
「...ずん君、それが最大の関心事でやんすか。」
ずん
「だって、政治とかよくわからないし、結局ボクの生活に関係あるのはそこだけなのだ!タダで観光できるなら最高じゃん!」