ずん
「一人殺したら即死刑って、むしろ犯罪減るんじゃないのだ?」
でぇじょうぶ博士
「それが逆でやんす。抑止力が強すぎると、逆に犯罪者の行動がエスカレートするでやんすよ。」
やきう
「は?意味わからんわ。ワイなら絶対殺さんけどな。」
でぇじょうぶ博士
「一人殺しても死刑、二人殺しても死刑なら、口封じで二人目も殺す方が合理的になるでやんす。」
かっぱ
「ゲーム理論やん。最悪の状況やと、最悪の選択が最適解になるんや。」
やきう
「クソみたいな世界やな。でも貫井徳郎って社会派ちゃうんか?」
でぇじょうぶ博士
「表向きはそうでやんすが、北村薫先生は『本格の鎧を隠している』と看破したでやんす。」
ずん
「つまり、社会派の皮を被った本格ミステリなのだ?」
かっぱ
「そういうこっちゃ。『驚き』を重視しとるんが本格の証や。」
でぇじょうぶ博士
「この短編集は、究極の思考実験でやんす。法律が変わると人間の行動原理も変わる、その恐ろしさを描いてるでやんすよ。」
ずん
「でもさ、現実でも死刑制度あるじゃん?それとどう違うのだ?」
でぇじょうぶ博士
「現実は『情状酌量』があるでやんす。でもこの世界は完全に一人でアウト。グレーゾーンが消滅するでやんすね。」
かっぱ
「人間は曖昧さで生きとるからな。それを奪ったら地獄や。」
やきう
「じゃあ過失致死もアウトなんか?車運転できへんやん。」
でぇじょうぶ博士
「そこが思考実験の面白さでやんす。社会システムが崩壊するレベルの設定でやんすからね。」
ずん
「ボク、この世界に生まれなくて良かったのだ...」
やきう
「お前、今の世界でもギリギリやろ。社会的に死んどるやんけ。」
かっぱ
「でも貫井徳郎は直木賞4回もノミネートされとるんやろ?なんで取れへんのや?」
でぇじょうぶ博士
「おいらの推測でやんすが、『驚き』に特化しすぎて、純文学的な深みが足りないと判断されたのかもでやんす。」
やきう
「要するに、トリック重視で人間描写が浅いってことか?」
でぇじょうぶ博士
「いえいえ、むしろ逆でやんす。社会派として人間を描きつつ、本格の仕掛けも仕込む。二兎を追って二兎とも捕まえようとするから、どっちつかずに見えるのかもでやんす。」
ずん
「うーん、難しいのだ。結局面白いの?面白くないの?」
かっぱ
「面白いに決まっとるやろ。60万部売れとんねんから。」
やきう
「ワイは『慟哭』読んだけど、あれはガチでヤバかったで。ラスト、マジで叫んだもん。」
でぇじょうぶ博士
「やはりやきう君も『驚き』にやられたでやんすね。それが貫井ミステリの真骨頂でやんす。」
ずん
「じゃあボクも読んでみようかな...いや、でも一人殺したら死刑の世界とか怖すぎるのだ。」
ずん
「だって、もしボクがその世界にいたら、絶対誰か殺しちゃうと思うのだ!」
でぇじょうぶ博士
「ずん君、それは不穏当でやんす...でも『紙の梟』は全6編収録の短編集でやんすから、気軽に読めるでやんすよ。」
ずん
「短編なら大丈夫かも!ボク、長編は3ページで飽きるんだよね。」
でぇじょうぶ博士
「ちなみにタイトルの『ハーシュソサエティ』は『厳格な社会』という意味でやんす。harshは『厳しい』という英語でやんすね。」
ずん
「へー、カタカナだとカッコいいけど、日本語だと普通なのだ。」
やきう
「『厳しい社会の紙のフクロウ』...なんやそれ、意味わからんわ。」
でぇじょうぶ博士
「フクロウは知恵の象徴でやんす。でも紙製、つまり脆い。厳格すぎる社会の知恵は、結局もろいという暗喩かもでやんす。」
かっぱ
「深読みしすぎやろ。作者そこまで考えてへんわ。」
ずん
「でもさ、一人殺したら死刑の世界って、逆に殺人犯が英雄視されそうなのだ。だって覚悟完了してるってことでしょ?」
でぇじょうぶ博士
「おお、それは鋭い指摘でやんす!確かに、リスクとリターンが極端だと、犯罪が一種の自己表現になる可能性があるでやんす。」
やきう
「それ、現実でもテロリストが英雄視されるのと同じ構造やん。ヤバすぎやろ。」
かっぱ
「人間の本質は変わらんのや。ルールがどう変わろうとな。」
ずん
「じゃあ結局、この本が言いたいのは『法律変えても無駄』ってこと?」
でぇじょうぶ博士
「それは短絡的でやんす。むしろ『法律と人間性の相互作用』を描いてるんでやんす。システムが人を変え、人がシステムを変える、その循環でやんすよ。」
やきう
「ワイには関係ない話やな。どうせ家から出ーひんし。」
ずん
「ねえねえ、でも一つ疑問なのだ。この世界、警察とか裁判官はどうなってるの?」
でぇじょうぶ博士
「それは本を読んでのお楽しみでやんす。ネタバレは野暮でやんすからね。」
ずん
「ボク、この世界なら絶対に医者にはなりたくないのだ。手術ミスったら即死刑じゃん!」