ずん
なんか「日本スゴイ」の本が100万部売れてた出版社が倒産したらしいのだ。これ完全にギャグなのだ。
でぇじょうぶ博士
ああ、東邦出版でやんすね。『JAPAN CLASS』シリーズで一世を風靡したものの、2019年に民事再生法の適用を受けたでやんす。まさに「日本の出版業界スゴイ(倒産率)」でやんす。
やきう
ワイ、あの手のムック本見たことあるで。外国人が「日本マジ最高!」って褒めてるやつやろ?あれ読んでるとワイまで偉くなった気がするんや。
かっぱ
お前が偉くなるわけないやろ。他人の褒め言葉で承認欲求満たすとか、どんだけ自己肯定感低いねん。
ずん
でも実際100万部も売れたってことは、みんな日本を褒められたかったってことなのだ?
でぇじょうぶ博士
その通りでやんす。2010年代前半は、失われた20年を経て日本人の自信が地に落ちていた時期でやんす。そこに「外国人が日本を絶賛してるぞ!」という甘い蜜を垂らせば、飢えた蟻のように群がるのは必然でやんす。
やきう
せや、ワイも職場で評価されへんから、せめて本の中の外国人に褒めてもらいたいんや。「日本の自販機スゴイ!」とか言われると、なんかワイが作ったような気になるしな。
かっぱ
お前、自販機一台も作ったことないやん。むしろ自販機に小銭詰まらせて逆ギレしてたやろ。
ずん
でもさ、100万部売れたのに倒産ってどういうことなのだ?普通大ヒットしたら儲かるんじゃないのだ?
でぇじょうぶ博士
ふむ、鋭い指摘でやんすね。実は出版業界には「ヒット依存症」という病があるでやんす。一発当てると次も同じものを作りたがる。東邦出版も『JAPAN CLASS』の成功に味をしめて、似たような本ばかり出し続けたでやんす。
やきう
それの何があかんねん。売れるもん作るのが商売やろ。
でぇじょうぶ博士
問題は市場の飽和でやんす。宝島社も『すごいニッポン100』を出し、類似本が雨後の筍のように乱立したでやんす。読者も「また同じネタかよ」と気づき始めたんでやんす。さらに致命的なのは、これらの本に書かれている「海外の反応」の出典が一切明記されていないことでやんす。
かっぱ
つまりソースなしってことやん。ネットの「海外の反応まとめサイト」と同レベルやないか。
ずん
え、じゃあもしかして適当に作った外国人のコメントだったりするのだ?
でぇじょうぶ博士
その可能性は否定できないでやんす。真偽不明の情報を「外国人が言ってた」という体で垂れ流すのは、まさに現代のプロパガンダ手法でやんす。読者は「外国人のお墨付き」という権威に弱いでやんすからね。
やきう
でもワイ、ウォシュレットとか自販機とか、実際すごいと思うで。それを誇るのは別にええやろ。
かっぱ
誇るのはええけど、他人の言葉借りて「ほら見ろ、外国人も言うてるやん!」ってやるのがダサいんや。自分の言葉で語れや。
ずん
なるほどなのだ。つまり日本スゴイ本って、自分に自信がない人向けの精神安定剤みたいなものなのだ。
でぇじょうぶ博士
まさにその通りでやんす。しかも副作用として、現実を直視する能力が低下するでやんす。日本の抱える問題—少子高齢化、経済停滞、格差拡大—から目を背けさせる麻薬のようなものでやんすね。
やきう
うるさいわ。ワイは現実逃避したいんや。毎日満員電車乗って、クソ上司に怒られて、給料上がらへん生活してるんやぞ。せめて本の中くらい「日本スゴイ」って思わせてくれや。
かっぱ
その思考が東邦出版を倒産させたんやで。みんながお前みたいに現実逃避ばっかりしてたら、そら国も会社も沈むわ。
ずん
でもさ、宝島社の方はまだシリーズ続いてるんでしょ?なんで東邦出版だけ倒産したのだ?
でぇじょうぶ博士
それは企業体力の差でやんす。宝島社は他にも多様な出版物を持っていたのに対し、東邦出版は『JAPAN CLASS』への依存度が高すぎたでやんす。これは投資でいう「分散投資の失敗」でやんすね。全財産を一つの株に突っ込んで、それが暴落したようなもんでやんす。
やきう
つまり東邦出版は「日本スゴイ」に全ベットして負けたわけか。皮肉なもんやな。
かっぱ
そもそも「外国人が褒めてる」ってコンセプト自体が、植民地根性丸出しやん。白人様に認められてやっと安心するって、どんだけ自己評価低いねん。
ずん
でもボク、外国人に「日本いいね」って言われると嬉しいのだ。それって悪いことなのだ?
でぇじょうぶ博士
悪いことではないでやんす。問題は、それが商業的に搾取されることでやんす。出版社は読者の承認欲求を食い物にして金儲けしていたわけでやんす。そしてそのビジネスモデルは、市場の飽和と読者のリテラシー向上によって崩壊したでやんす。
やきう
なんや、結局読者が賢くなったってことか。それならええやん。
かっぱ
賢くなったわけやない。飽きただけや。次は別の承認欲求ビジネスに引っかかるで、お前ら。
ずん
じゃあ次は何が流行るのだ?「韓国スゴイ」とか「中国スゴイ」とかになるのだ?
でぇじょうぶ博士
いや、むしろ「お前スゴイ」でやんす。個人を褒め称えるコンテンツが次のトレンドでやんす。すでに自己啓発本やコーチングビジネスがその役割を果たしているでやんすけどね。
やきう
ワイもコーチングとか受けたことあるわ。「あなたには無限の可能性がある」とか言われて、その場は気持ちよかったけど、結局何も変わらんかったで。
かっぱ
そら変わらんわ。金払って褒めてもらっただけやもん。ホストクラブと変わらへんやん。
ずん
なんか悲しくなってきたのだ。結局、みんな褒められたいだけで、その欲求をビジネスにされてるってことなのだ?
でぇじょうぶ博士
残酷な真実でやんすが、その通りでやんす。資本主義社会では、あらゆる欲望が商品化されるでやんす。承認欲求も例外ではないでやんす。
やきう
せや、おいらも「日本スゴイ」本の続編として「ワイスゴイ」って本出したらどうや。自分で自分を褒める本や。
ずん
でも考えてみたら、ボクたちって他人に褒められないと自分の価値を認められないのって、かなり病んでるのだ?
でぇじょうぶ博士
そうでやんすね。これは社会学的には「承認資本主義」と呼ばれる現象でやんす。SNSの「いいね」も同じ構造でやんす。他者からの評価が自己価値の唯一の尺度になってしまっているでやんす。
やきう
うるせえ。ワイはインスタのいいねが生きがいなんや。それの何があかんねん。
かっぱ
あかんとは言うてへん。ただお前、他人の評価に人生握られすぎやろって話や。
ずん
じゃあどうすればいいのだ?自分で自分を褒めればいいのだ?
でぇじょうぶ博士
それも一つの方法でやんすが、本質的な解決策は「他者評価に依存しない自己肯定感の構築」でやんす。つまり、外国人に褒められなくても、SNSでいいねされなくても、自分の価値を認められる力でやんす。
かっぱ
最初から諦めんなや。まあでも、お前が無理なのはわかるわ。
ずん
結局、東邦出版が倒産したのって、日本人全体の自己肯定感の問題が表面化しただけってことなのだ?
でぇじょうぶ博士
鋭い分析でやんす、ずん。まさにその通りでやんす。『JAPAN CLASS』の成功と失敗は、日本社会の病理を映し出す鏡だったでやんす。100万部売れたということは、それだけ多くの人が承認を渇望していたということでやんす。
やきう
でもな、ワイは思うんやけど、別に承認されたいって思うのは人間として自然やろ。それを「病理」とか言うのはおかしないか?
かっぱ
承認されたいのは自然や。でもな、架空の外国人に褒めてもらって満足するのは、もはやただの自慰行為やで。
ずん
かっぱ、言い方が下品なのだ!でもまあ、言いたいことはわかるのだ。
でぇじょうぶ博士
興味深いのは、この現象が2010年代に集中していることでやんす。リーマンショック後の経済停滞、東日本大震災、そして「失われた30年」という言葉が定着し始めた時期でやんす。社会不安が高まると、人々は心の拠り所を求めるでやんす。
やきう
せや、ワイもあの頃は不安やったわ。就職氷河期やし、給料上がらんし、将来見えへんし。そんな時に「日本スゴイ」って言われたら、そら飛びつくわ。
かっぱ
で、飛びついた結果が東邦出版の倒産か。読者も出版社も共倒れやん。まさにWin-Winの逆、Lose-Loseや。
ずん
でもさ、宝島社はまだ続いてるんでしょ?ってことは、まだまだ需要はあるってことなのだ?
でぇじょうぶ博士
残念ながらそうでやんす。しかし宝島社のシリーズも明らかに勢いは落ちているでやんす。読者も徐々に気づき始めているでやんす。「外国人が褒めてるから日本スゴイ」という論理の空虚さにね。
やきう
でも正直、ワイまだあの手の本好きやで。読んでると気持ちええねん。現実は辛いんや。
かっぱ
現実逃避の道具として使うのは勝手やけど、それを真実やと思い込むなよ。ファンタジーはファンタジーとして楽しめや。
ずん
じゃあ結局、「日本スゴイ」本って、現代のおとぎ話みたいなものなのだ?
でぇじょうぶ博士
まさに的確な表現でやんす。おとぎ話と同じで、現実逃避のためのフィクションでやんす。問題は、多くの読者がそれをノンフィクションだと信じ込んでしまうことでやんす。
やきう
ノンフィクションやろ?実際に外国人が言うてることやん。
かっぱ
出典もないのにどうやって確認すんねん。「ある外国人が言いました」とか、「海外で話題に」とか、全部証拠なしやん。ネットの「ソースは俺」と変わらへんで。
ずん
そういえば、あの本に出てくる外国人って、いつも日本を褒めてばっかりなのだ。悪いところは一切言わないのだ。それって逆に不自然なのだ。
でぇじょうぶ博士
その通りでやんす。これは「確証バイアス」という認知的歪みでやんす。都合のいい情報だけを集めて、都合の悪い情報は無視する。まさに「日本スゴイ」本の編集方針そのものでやんす。
やきう
でもな、悪いところばっかり見てても気が滅入るやろ。たまにはええとこだけ見たってええやん。
かっぱ
ええとこだけ見るのと、悪いとこを存在しないことにするのは違うで。現実を直視せんと、問題は解決せえへん。
ずん
なんか深い話になってきたのだ。結局、日本の問題って何なのだ?
でぇじょうぶ博士
一言で言えば「現実逃避」でやんす。高度経済成長の栄光にすがりつき、変化を恐れ、問題を先送りにし続けた結果が今の日本でやんす。「日本スゴイ」本はその現実逃避を加速させるツールだったでやんす。
やきう
うるせえ。ワイは逃避したいんや。現実と向き合うとか無理や。向き合ったところで何も変わらへんやん。
かっぱ
その態度が東邦出版を潰したんやで。読者が現実逃避をやめた瞬間、商売は成り立たんくなったんや。
ずん
でもさ、東邦出版が潰れたってことは、少しは日本も良くなってるってことなのだ?
でぇじょうぶ博士
楽観的な見方でやんすが、一理あるでやんす。少なくとも一部の読者は「外国人の賞賛」という麻薬から抜け出したでやんす。これは小さいながらも進歩でやんす。
やきう
でもな、ワイの周りにはまだまだ「日本スゴイ」信者おるで。特におっさん連中。
かっぱ
そらそうや。彼らは高度経済成長を経験した世代やから、「日本はすごかった」という記憶が強烈なんや。その記憶にすがりつきたいんやろ。
ずん
なんか悲しいのだ。過去の栄光にすがるって、負け犬みたいなのだ。
でぇじょうぶ博士
厳しい言い方でやんすが、的を射ているでやんす。真の強者は過去ではなく未来を見るでやんす。「日本はかつてスゴかった」ではなく「日本はこれからスゴくなる」と言えるかどうかが重要でやんす。
やきう
無理や。もう日本はオワコンや。中国にもアメリカにも勝てへん。せめて「昔はすごかった」と言わせてくれや。
かっぱ
その思考停止が一番ヤバいねん。まだ終わってへんのに勝手に終わらせるな。
ずん
でもボク、外国人に「日本いいね」って言われると嬉しいのだ。それって別に悪いことじゃないと思うのだ。
でぇじょうぶ博士
悪いことではないでやんす。問題は、それを商業的に搾取する構造でやんす。そして、その賞賛を真に受けすぎて現実が見えなくなることでやんす。適度な距離感が大事でやんす。
やきう
距離感とか難しいこと言うなや。ワイはただ褒められたいだけなんや。
かっぱ
褒められたいなら、自分で何か成し遂げろや。他人の褒め言葉拾い集めて満足してる場合ちゃうで。
ずん
結局、東邦出版の倒産って、日本人全体への警鐘だったのだ。「そろそろ目を覚ませ」っていう。
でぇじょうぶ博士
素晴らしい解釈でやんす、ずん。まさに東邦出版の倒産は、象徴的な出来事だったでやんす。「日本スゴイ」バブルの崩壊でやんす。
やきう
バブルって言うけど、実際日本はすごいとこもあるやろ。治安とか、清潔さとか。
かっぱ
それは認めるわ。でもな、それを必要以上に誇張して、他国を見下す態度はクソやで。謙虚さを失ったら終わりや。
ずん
なるほどなのだ。つまり適度な自信は必要だけど、過度な自画自賛は危険ってことなのだ。
でぇじょうぶ博士
その通りでやんす。バランスが大事でやんす。自己肯定感は必要でやんすが、それが現実歪曲に繋がってはいけないでやんす。
やきう
難しいこと言うなや。結局ワイらはどうしたらええねん。
かっぱ
簡単や。他人の評価に一喜一憂せず、自分の足で立て。そして現実を直視しろ。それだけや。
ずん
でもボク、楽して褒められたいのだ。努力とか嫌なのだ。だから「日本に生まれただけでスゴイ」って言われると嬉しいのだ。努力ゼロで承認されるの最高なのだ!