ずん
「読むたびに印象が変わる本があるらしいのだ!これって一体どういうこと?本って一回読んだら終わりじゃないのか?」
でぇじょうぶ博士
「ほう、それは興味深い現象でやんすね。実は読者の心理状態や経験値によって、同じテキストでも異なる解釈が生まれるのは脳科学的にも証明されているでやんす。」
やきう
「ワイも昔読んだ漫画、今読んだら全然違う感想になったわ。当時は主人公応援してたのに、今は敵キャラの方が正しいと思えてきたんや。」
かっぱ
「それ、お前が歳とって性格歪んだだけやろ。」
ずん
「でもこの筆者、5回も同じ本読んでるのだ!さすがにそれは読みすぎじゃないのか?他に読む本ないのか?」
でぇじょうぶ博士
「いやいや、この人は仕事で読んでるでやんす。推薦文を書いたり、文学賞の選考委員をしたり、文庫解説を書いたり...まるでおいらが同じ実験を何度も繰り返すようなもんでやんすね。」
やきう
「つまり金もらって読んでるってことやな。ええ仕事やんけ。ワイも本読むだけで金もらいたいわ。」
ずん
「それにしても、物語の内容がすごく重そうなのだ。母親との関係に苦しむ少女たちって...読んでて辛くならないのか?」
でぇじょうぶ博士
「そこが村山由佳氏の筆力でやんすよ。重いテーマを扱いながらも、子ども時代の感覚—鉄棒の金気臭さ、団地の湿り気—を丁寧に描写することで、読者の記憶を呼び覚ますでやんす。」
やきう
「鉄棒の金気臭さって言われても、ワイ運動音痴やから鉄棒したことないねん。」
ずん
「で、この本の何がそんなに特別なのだ?同じような少女小説なんていくらでもあるんじゃないのか?」
でぇじょうぶ博士
「鋭い指摘でやんすね。確かに「対照的な二人の少女の友情」という設定自体は目新しくないでやんす。しかし、この作品の真価は「本来出会うはずのなかった二人が運命的に出会う」という一点に集約されているでやんす。」
やきう
「運命的な出会いなぁ...ワイにもそんな出会いがあればなぁ。まあ、ワイは選ばれし者やから、いつか必ず運命の人が現れるはずやけど。」
ずん
「しかし、週に一度しか会えないって、今の時代SNSとかで毎日連絡取り合えるんじゃないのか?なんか設定が古臭い気がするのだ。」
でぇじょうぶ博士
「むむむ、そこが重要なポイントでやんす!むしろ週一という制約があるからこそ、その時間が特別な輝きを持つでやんす。現代のように24時間繋がれる関係とは真逆の、貴重で儚い時間でやんすね。」
やきう
「なるほどなぁ。ワイも毎日ネット繋ぎっぱなしやけど、特別な瞬間なんて一度もないわ。」
かっぱ
「そらそうやろな。お前の人生、特別なこと何もないもんな。」
ずん
「でも筆者が「読むたびに印象が変わる」って言ってるのは、結局自分の人生経験が変わったからじゃないのか?本自体は変わってないわけだし。」
でぇじょうぶ博士
「その通りでやんす!優秀でやんすね、ずん君。読書とは、固定されたテキストと流動的な読者の心が出会う場でやんす。同じ人間でも時間が経てば別人になるでやんす。だからこそ、何度読んでも新しい発見があるでやんす。」
やきう
「ちょっと待てや。それって結局、本の内容覚えてないだけちゃうん?記憶力悪いだけやろ。」
ずん
「じゃあボクも今から『光のとこにいてね』を読んでみようかなと思ったけど、5回も読まないといけないなら面倒くさいのだ。1回で済ませる方法はないのか?」
でぇじょうぶ博士
「それは本末転倒でやんす!5回読むことに意味があるんじゃなくて、人生のそれぞれの段階で読み返すことに意味があるでやんす。急いで5回読んでも同じ印象になるだけでやんす。」
やきう
「つまり、若い時に読んで、社会人になって読んで、結婚して読んで、子供できて読んで、老後に読むってことか。ワイには関係ない話やな。ずっと独身やし。」
ずん
「それにしても、この本が単行本出てから1ヶ月半で第4刷って、めちゃくちゃ売れてるじゃないか!やっぱりみんな重い話が好きなのだ?」
でぇじょうぶ博士
「単純に「重い話が好き」というわけじゃないでやんす。むしろ、自分の中に押し込めている感情や記憶に触れたいという欲求があるでやんす。この作品は、読者が忘れていた子ども時代の感覚を呼び覚ます力があるでやんす。」
やきう
「なるほどなぁ。ワイも子供の頃の記憶思い出したいわ...あ、でも思い出したくないこともいっぱいあるな。」
ずん
「ところで、この本の主人公の名前が「果遠(かのん)」と「結珠(ゆず)」って、キラキラネームすぎないか?普通に「かなこ」とか「ゆみ」じゃダメだったのか?」
でぇじょうぶ博士
「むむむ、名前には意味があるでやんす。「果遠」は「遠くの果て」を、「結珠」は「珠を結ぶ」を連想させるでやんす。二人の運命的な繋がりを象徴しているでやんすね。」
やきう
「でも読みにくいやん。ワイ、最初「かえん」って読んでもうたわ。」
ずん
「それで、この二人は最終的にどうなるのだ?ハッピーエンドなのか?それともバッドエンドなのか?ネタバレしてくれないか?」
でぇじょうぶ博士
「それは言えないでやんす!ネタバレは読書体験を台無しにするでやんす。自分で読んで確かめるでやんす。」
やきう
「ワイ、ネタバレサイト見てから本読むタイプやねん。その方が効率的やろ。」
かっぱ
「お前、人生の楽しみ方知らんのやな。可哀想に。」
ずん
「でもさ、正直なところ、本なんて読まなくても映画化されるまで待てばいいんじゃないのか?その方が早いし楽なのだ。」
でぇじょうぶ博士
「それは大きな間違いでやんす!映画と小説は全く別の芸術形態でやんす。特にこの作品のような、内面の機微や感覚的描写が重要な物語は、映像化では表現しきれない部分が多いでやんす。」
やきう
「まあでも、実写化されたら絶対キャスティングで揉めるやろな。「イメージと違う!」ってな。」
かっぱ
「お前、毎回そういうこと言うてクレームつけるタイプやろ。」
ずん
「ちょっと待ってくれ。さっきから気になってたんだけど、この記事書いた人、文庫解説も書くんだよね?つまり自分が推薦した本の解説を書くって...それって利益相反じゃないのか?」
でぇじょうぶ博士
「鋭い指摘でやんす!でも出版業界ではよくあることでやんす。むしろ作品を深く理解している人が解説を書くのは理にかなっているでやんす。ただし、批判的視点が失われる危険性はあるでやんすけどね。」
やきう
「要するに、仲間内で褒め合ってるだけやん。お前ええな、お前もええなってな。文壇って閉鎖的やな。」
かっぱ
「お前に言われたくないわ。お前こそネットの狭い世界に閉じこもっとるやん。」
ずん
「それにしても、5種類も同じ本を持ってるって、場所取るし無駄じゃないのか?全部同じ内容なんだから1冊あれば十分なのだ。ボクならメルカリで売るのだ。」
でぇじょうぶ博士
「やれやれ...それぞれ微妙に違うでやんすよ。ゲラと完成版では校正が入っているでやんすし、文庫版には単行本初版限定の掌編も収録されているでやんす。コレクターとしては全部揃えたくなるでやんす。」
やきう
「コレクターねぇ...ワイもフィギュア集めとるけど、誰も理解してくれへんねん。「部屋狭くなるだけやん」って。」
かっぱ
「それはお前が買いすぎなんや。部屋中フィギュアまみれやろ。」
ずん
「まあ、結局のところ、この本が伝えたいことって何なのだ?「母親との関係が大事」ってこと?それとも「友情は素晴らしい」ってこと?」
でぇじょうぶ博士
「そんな単純な教訓話じゃないでやんす!むしろ、答えのない苦しみの中で、それでも誰かと繋がることの尊さを描いているでやんす。綺麗事じゃない、生々しい子ども時代の光と影でやんすね。」
やきう
「なるほどなぁ。でもワイには関係ない話やな。ワイは一人で生きていけるタイプやし。」
ずん
「で、でぇじょうぶ博士は、この本読むたびに印象変わるって現象、科学的に説明できるのか?」
でぇじょうぶ博士
「もちろんでやんす!人間の記憶は再構築されるものでやんす。過去の記憶を思い出すたびに、現在の文脈で書き換えられているでやんす。だから同じ本を読んでも、その時々の自分の状態によって異なる箇所に反応するでやんす。」
やきう
「それって要するに、人間の記憶なんて当てにならんってことやん。目撃証言とか信用できへんやん。」
ずん
「じゃあさ、極論を言うと、ボクが今この本を読んでも、10年後に読んでも、全く違う本を読んだのと同じってことだよね?だったら2冊買う価値があるってことじゃないか!出版社は2冊売りすればいいのだ!」
でぇじょうぶ博士
「その発想はなかったでやんす...でも商売としてはアリかもしれないでやんすね。「10年後のあなたへ」バージョンとか。」
やきう
「それ、ただの便乗商法やん。でもワイは買うで。限定版とか弱いねん。」
かっぱ
「お前、搾取されとることに気づいてへんのか...」
ずん
「ところで、この本に出てくる二人の少女って、実在のモデルがいるのかな?作者の村山由佳さんの経験とか?」
でぇじょうぶ博士
「それは分からないでやんすが、優れたフィクションは個人的な経験と普遍的な真実を巧みに織り交ぜているものでやんす。完全な創作だとしても、どこかに作者の実感が込められているはずでやんす。」
やきう
「ワイも小説書いてみたいわ。絶対ベストセラーになるで。タイトルは「ネットの片隅で真実を叫ぶ男」や。」
ずん
「しかし、週に一度しか会えない友達って、今の時代リアリティあるのかな?スマホでいつでも連絡取れるし、オンラインゲームで毎日会えるのだ。」
でぇじょうぶ博士
「だからこそ逆に新鮮でやんす!常時接続の現代だからこそ、限られた時間の貴重さが際立つでやんす。デジタルデトックスならぬ、「人間関係デトックス」でやんすね。」
やきう
「でもワイ、リアルで週一で会う友達おらんわ...年に一回も会わへんな。」
ずん
「最後に聞きたいんだけど、この本、結局ボクは読むべきなのか?それとも読まなくてもいいのか?ハッキリ教えてくれ!」
でぇじょうぶ博士
「それはずん君次第でやんす!ただし、子ども時代の記憶を呼び覚まされる覚悟があるならば読むべきでやんす。鉄棒の金気臭さ、団地の湿り気...そういう感覚を再体験したいなら、読む価値があるでやんす。」
やきう
「ワイは読まんわ。どうせ途中で飽きるし。積読が増えるだけや。」
ずん
「わかった!じゃあボクは図書館で借りて読むのだ!買わなくても読めるし、場所も取らないし、完璧な解決策なのだ!」