ずん
「おい、これヤバいのだ。新人がいきなり160キロ投げたって、どういうことなのだ?」
でぇじょうぶ博士
「やんすねぇ。文学界に大谷翔平が現れたようなもんでやんす。『白鷺立つ』という作品、千日回峰行という死と隣り合わせの修行を題材にしてるでやんす。」
かっぱ
「死ぬかもしれん修行って...そら重いテーマやわ。でも新人がそんなん書けるもんなんか?」
でぇじょうぶ博士
「それが書けちゃったんでやんす。しかも直木賞作家の安部龍太郎氏が『神様が背中を押してくれた作品』と絶賛してるでやんす。」
ずん
「神様降臨案件なのだ!でもさ、本人は『深く考えずに書いた』って言ってるのだ。天才あるあるなのだ?」
かっぱ
「ほんまに天才は自分が天才って気づいてへんねんな。むしろそれが恐ろしいわ。」
でぇじょうぶ博士
「天才の特徴でやんすね。『この言葉を選ぶしかない』という必然性だけで半年で書き上げたとか、おいらには到底理解できない世界でやんす。」
ずん
「でも調べる期間の方が長かったって言ってるのだ。つまり努力もしてるってことなのだ?」
でぇじょうぶ博士
「そうでやんす。天才と努力の融合でやんすね。千日回峰行という超マニアックな世界を重厚に描くには、膨大なリサーチが必要でやんす。失敗したら死ぬ修行でやんすからね。」
かっぱ
「ちょい待ち。千日回峰行って何やねん?山を千日歩き回るやつか?」
でぇじょうぶ博士
「簡単に言えばそうでやんすが、実態は地獄でやんす。比叡山の険しい山道を7年かけて千日歩く荒行で、途中で挫折したら自害しなければならないという掟があるでやんす。」
ずん
「えっ...それってブラック企業どころの話じゃないのだ。」
かっぱ
「いや、ブラック企業の比較対象にすんなや。そもそもの次元が違うがな。」
でぇじょうぶ博士
「しかもこの行を成し遂げたのは、戦後わずか数十名でやんす。そんな超人的な世界を、新人作家が見事に描写したわけでやんす。」
ずん
「じゃあボクも小説家になれば一発当てられるのだ?」
かっぱ
「お前、千日回峰行どころか千歩も歩けへんやろ。」
でぇじょうぶ博士
「それに住田さんは『語り』の文体が確立されてるとのことでやんす。これは日本の物語の伝統的な手法で、読み手を物語世界に引き込む力があるでやんす。」
ずん
「語りって、昔話みたいな感じなのだ?『むかしむかし』的な?」
でぇじょうぶ博士
「まあそういう要素もあるでやんすが、もっと洗練されたものでやんす。言葉が綺麗で、リズムがあって、読んでいて心地よいでやんす。」
かっぱ
「要するに、文章がうまいってことやろ?それって才能なんか、努力なんか?」
でぇじょうぶ博士
「両方でやんす。ただ、住田さん本人は『その時の必然として選んだ』と言ってるでやんす。つまり、意識的に技巧を凝らしたわけではなく、自然とそうなったということでやんす。」
ずん
「それって結局、神様が降りてきたってことなのだ?」
でぇじょうぶ博士
「安部龍太郎氏はそう評してるでやんすね。文学の世界では時々そういうことが起きるでやんす。まるで何かに導かれるように傑作が生まれることがあるでやんす。」
かっぱ
「でもな、神様降臨とか言うてるけど、本人めっちゃ困惑しとるやんけ。『そんな風に言ってもらえるとは思ってなかった』って。」
ずん
「天才って自覚ないんだな...ボクも天才かもしれないのだ。」
でぇじょうぶ博士
「ちなみに住田さんは安部龍太郎氏の『等伯』に深い感銘を受けていたそうでやんす。つまり、尊敬する作家から最大級の賛辞をもらったわけでやんす。」
ずん
「それってもう、漫画の主人公展開なのだ!憧れの人に認められるとか、熱すぎるのだ!」
かっぱ
「しかも松本清張賞やろ?いきなり大きな賞取っとるやん。これからどないなるんや。」
でぇじょうぶ博士
「それが問題でやんす。デビュー作でこれだけ評価されると、次回作のハードルが異常に高くなるでやんす。いわゆる『二作目のジンクス』というやつでやんす。」
でぇじょうぶ博士
「詰んではいないでやんすが、プレッシャーは凄まじいものになるでやんす。『神様が降りてきた』レベルの作品を、もう一度生み出せるかどうか...」
かっぱ
「そら無理やろ。神様いつでも降りてくるわけちゃうし。」
ずん
「じゃあ神様に頼めばいいのだ。『また降りてきてください』って。」
でぇじょうぶ博士
「神様は予約制じゃないでやんす...。ただ、住田さんには取材力という武器があるでやんす。調べる期間が書く期間より長かったということは、徹底的にリサーチするタイプでやんす。」
かっぱ
「なるほどな。神頼みだけやなくて、ちゃんと地道な努力もしとるわけや。」
ずん
「でもさ、歴史小説ってそんなに人気あるのだ?若者は読まないイメージなのだ。」
でぇじょうぶ博士
「甘いでやんす、ずん。歴史小説は日本文学の王道ジャンルでやんす。司馬遼太郎、吉川英治、藤沢周平...名作がゴロゴロしてるでやんす。」
かっぱ
「最近やと『逃げ恥の壬申の乱』とかも話題になったやん。歴史ものは根強い人気あるで。」
ずん
「へー、意外なのだ。じゃあボクも歴史小説書こうかな。『ずんだもんの本能寺の変』とか。」
かっぱ
「タイトルからしてアカンわ。そもそもお前、歴史知らんやろ。」
でぇじょうぶ博士
「歴史小説は知識だけじゃダメでやんす。その時代の空気、人々の息遣い、文化背景...全てを理解して初めて書けるものでやんす。」
かっぱ
「だから神様は召喚できへんて。お前、ホンマにアホやな。」
でぇじょうぶ博士
「ところで、この対談記事は前編でやんす。後編ではさらに深い話が聞けるはずでやんす。」
ずん
「えっ、続きがあるのだ?じゃあまた神様降臨の話するのだ?」
かっぱ
「後編は『歴史小説への挑み方』がテーマやろ。もっと具体的な創作論になるんちゃうか。」
でぇじょうぶ博士
「おそらくそうでやんす。安部龍太郎氏も直木賞作家でやんすから、新人へのアドバイスとか、創作の極意とか語られるんじゃないでやんすか。」
ずん
「じゃあボクも読んで勉強するのだ!そして一発当てるのだ!」
かっぱ
「お前が一発当てるのは宝くじぐらいやろな。しかも三等。」
ずん
「三等でも当たれば御の字なのだ!ボク、神様信じるのだ!」