ずん
「ワリカンって当たり前だと思ってたけど、昔は奢りあう文化だったのだ!これ、日本人が貧乏になった証拠なんじゃないのだ?」
でぇじょうぶ博士
「それは違うでやんす。むしろ近代化で合理的思考が浸透した結果でやんす。つまり、酔っ払って散財するより計算して飲む方が賢いという価値観の転換でやんす」
やきう
「ほな昔の日本人は馬鹿やったってことかいな。ワイは最初から割り勘派やで。奢るとか意味わからんわ」
かっぱ
「お前、奢られたこともないやろ。友達おらんのやから当たり前や」
ずん
「でも博士、昔は上役が全額払うのが普通だったのだ?今の会社の飲み会でそれやったら破産するのだ」
でぇじょうぶ博士
「そうでやんす。1942年の記録では、教授が学生4人連れて飲んで60円使って『痛い』と日記に書いてるでやんす。当時の大卒初任給が70円程度でやんすから、給料の8割以上を一晩で使ったことになるでやんす」
やきう
「草。今で言うたら手取り20万のやつが16万円奢ったようなもんやんけ。そら痛いわ」
かっぱ
「でも江戸時代なら『粋やなぁ』で終わりやったんやろ?価値観って面白いもんやな」
ずん
「じゃあワリカンって、みんなが貧乏になったんじゃなくて、賢くなったってことなのだ?」
でぇじょうぶ博士
「半分正解でやんす。実際、昭和恐慌の時に『考えながら飲む人が増えた』と柳田国男が記録してるでやんす。不景気で酒の売上が落ちたのも、この時が初めてだったでやんす」
やきう
「要するに金がなくなったから言い訳として『合理的』とか言い出しただけやろ。ワイには分かるで、その気持ち」
かっぱ
「お前の場合は最初から金ないやんけ。一緒にすな」
ずん
「面白いのは、子供の作文にも『酒に金使う人は貧乏で、節約する親は偉い』って書いてあったのだ。道徳教育にまで影響してたのだ」
でぇじょうぶ博士
「そうでやんす。1937年の小学5年生の綴り方に既にそういう記述があるでやんす。つまり、浪費は悪という価値観が、わずか数十年で子供にまで浸透したわけでやんす」
やきう
「今なら『パパが飲み会で散財した』ってSNSに晒されて炎上するやつやな。時代は変わっても本質は一緒や」
ずん
「結局、ワリカンって誰も損しない完璧なシステムなのだ!みんな平等に貧乏になれるのだ!」
でぇじょうぶ博士
「その発想はどうかと思うでやんす...」
ずん
「でも不思議なのは、昔の人は奢られることに罪悪感なかったのに、今は奢られると気まずいのだ。これって日本人の性格が変わったのだ?」
でぇじょうぶ博士
「鋭い指摘でやんす。近代以前は『富の再分配』として奢る行為が社会的義務だったでやんす。でも近代化で『自己責任』の概念が入ってきて、奢られることが『恩を売られる』行為に変質したでやんす」
やきう
「ワイは最初から奢られるの嫌やで。借り作りたくないからな。あと単純に誘われんけど」
ずん
「じゃあワリカンって、人間関係を希薄にする悪い文化なのだ?それとも合理的な良い文化なのだ?」
でぇじょうぶ博士
「どちらとも言えないでやんす。ワリカンは確かに人間関係をフラットにしたでやんすが、同時に『奢りあう』という互酬性も失われたでやんす。矢部貞治教授が60円使って『痛い』と書いたように、奢る側の葛藤も近代の産物でやんす」
やきう
「結局、みんな金ないのを認めたくないから『合理的』とか言ってるだけやろ。ワイは正直やで、金ないって」
かっぱ
「お前は正直なんやなくて、隠せないだけやろ」
ずん
「でもさ、近代化で合理的になったはずなのに、会社の飲み会とかまだ上司が多めに払う文化残ってるのだ。これ矛盾してないのだ?」
でぇじょうぶ博士
「良い点に気づいたでやんす。それは『タテマエとホンネ』の使い分けでやんす。建前では合理的・平等、でも実際には権力関係を酒代で表現する。まさに日本的二重構造でやんす」
やきう
「ほな結局、何も変わってないやんけ。看板だけ変えただけで、中身は江戸時代と一緒や」
かっぱ
「せや。人間なんてそんなもんや。時代が変わっても本質は変わらん」
ずん
「じゃあボク、これからは全部割り勘にするのだ!上司にも『合理的です』って言えば理解してもらえるのだ!」
でぇじょうぶ博士
「それは社会的に死ぬでやんす...」
やきう
「お前、そもそも飲み会誘われてないやろ。心配すんな」
ずん
「...そういえば最近、飲み会の誘いが来ないのだ。もしかしてボク、既に社会的に死んでるのだ?」