ずん
「立ち食いそばが絶滅危惧種になってるのだ!これは文化の危機なのだ!」
でぇじょうぶ博士
「危機でやんすね。昭和57年から令和5年まで、41年間も池袋で君塚は営業していたでやんす。人間でいえば中年の働き盛りで突然リストラされたようなもんでやんす。」
やきう
「41年?ワイの人生より長いやんけ。つまり、立ち食いそばの方がワイより社会貢献してるってことか...。」
ずん
「跡地がオシャレなステーキ屋になってるのだ。もう庶民の味方じゃないのだ!」
でぇじょうぶ博士
「センタービーフという名前でやんすね。ステーキライスとカレー。まあ、立ち食いそばの客単価300円が、1000円超えに化けたわけでやんす。地価高騰の池袋では当然の帰結でやんすなぁ。」
やきう
「池袋マルイも消えて、IT tower TOKYOとかいうキラキラネームのビルが建つんやろ?もう庶民が住める街やないわ。」
ずん
「でも新店が増えてるって書いてあるのだ!希望はあるのだ!」
でぇじょうぶ博士
「それは違うでやんす。新店が増えてるのは事実でやんすが、開業場所を見るとオフィス街の駅ナカばかりでやんす。つまり、サラリーマン専用の餌場と化しているわけでやんすよ。」
やきう
「餌場て...。でもまあ、ワイら社畜にとっては死活問題やからな。昼飯300円で済ませられるかどうかで、月の小遣いが変わるんや。」
ずん
「筆者が『意外と広かった』って気づいたのは面白いのだ。毎日通ってたのに気づいてなかったのだ?」
でぇじょうぶ博士
「それは人間の認知バイアスでやんす。狭い店内で黙々と食べることだけに集中してたから、空間認識が歪んでいたわけでやんすよ。失って初めて気づく典型例でやんす。」
やきう
「Long goodbyeとか言うてカッコつけとるけど、要するに『気づくの遅すぎやろ』ってツッコミ待ちやろ。」
ずん
「世田谷の『むらめん』の茹で麺に昆布出汁、自家製天ぷら...こだわりの味だったのだ。なぜ潰れたのだ!」
でぇじょうぶ博士
「家賃でやんす。池袋の一等地で41年も営業できたこと自体が奇跡だったでやんすよ。おそらく地権者との契約更新で折り合いがつかなかったんでやんす。再開発の波には逆らえないでやんすからね。」
やきう
「結局、金持ってる奴が勝つんやな。ワイらの思い出なんて、資本の論理の前では鼻くそ以下や。」
ずん
「春菊天そばが名物だったのだ...今の若者は春菊天そばの存在すら知らないのだ...」
でぇじょうぶ博士
「そこでやんす!実は春菊天というのは立ち食いそば界の隠れた名品でやんして、春菊の苦味とそばつゆの甘辛さが絶妙にマッチするんでやんす。衣のサクサク感と春菊のシャキシャキ感のコントラストもたまらないでやんすよ。」
やきう
「はいはい、ウンチク乙。で、お前はその味を二度と食えんわけや。ざまあ。」
ずん
「中華そばやマーボーそばもあったのだ!立ち食いそば屋なのに自由すぎるのだ!」
でぇじょうぶ博士
「それが昭和の立ち食いそば屋の魅力でやんす。今みたいに『コンセプト』だの『ブランディング』だの気にせず、店主が『旨いと思ったもん出す』というスタンスだったでやんすからね。」
やきう
「今のチェーン店は全部マニュアル通りやもんな。旨いけど個性がない。金太郎飴や。」
ずん
「ボク思ったのだ。立ち食いそば屋が消えるってことは、日本人の『早く安く旨く』という文化が消えるってことなのだ?」
でぇじょうぶ博士
「鋭い指摘でやんす。実際、ファストフードの概念が変化してるでやんすよ。昔は『安くて早い』が基本でやんしたが、今は『それなりの値段でそこそこ早い』に変わってるでやんす。つまり、貧乏人は外食するなと。」
やきう
「格差社会の縮図やんけ。立ち食いそば一杯で語れるとか、博士も大概やな。」
ずん
「じゃあボクたちは何を食べればいいのだ!?300円でお腹いっぱいになる時代は終わったのだ!?」
でぇじょうぶ博士
「残念ながら終わったでやんす。今や立ち食いそば一杯500円時代でやんす。むしろ君塚が300円台で提供してたこと自体が異常だったでやんすよ。」
やきう
「500円あったらスーパーで半額弁当買えるやんけ。外食する意味ないわ。」
ずん
「でも筆者は『新店が増えてる』って希望を見出してるのだ。ボクも希望を持ちたいのだ!」
でぇじょうぶ博士
「新店の多くは大手チェーンでやんす。富士そばとかゆで太郎とか、既に確立されたブランドばかりでやんすよ。君塚みたいな個人経営の店は、もう新規参入できない構造になってるでやんす。」
やきう
「つまり、立ち食いそば業界も大企業の寡占化が進んどるわけや。資本主義の勝利やな。」
ずん
「筆者の『Long goodbye』って言葉、なんかカッコつけてるけど寂しいのだ...」
でぇじょうぶ博士
「レイモンド・チャンドラーの小説のタイトルでやんすね。『長いお別れ』という意味でやんすが、41年間通った店との別れは確かに長いお別れでやんす。毎日の日常が消えるというのは、人生の一部が消えるのと同じでやんすからね。」
やきう
「センチメンタルやな。でも結局、跡地に立ったステーキ屋は繁盛しとるんやろ?つまり、世間は立ち食いそばより肉を求めとるってことや。」
ずん
「じゃあボクも肉食べるのだ!時代に乗るのだ!」
でぇじょうぶ博士
「...ずん君の財布では、センタービーフのステーキライスは高すぎて買えないと思うでやんすけどね。」
やきう
「自炊しろや。スーパーの見切り品の肉買って、家で焼け。それが一番経済的や。」
ずん
「自炊...?料理...?ボク天才エリートだから、そんな庶民的なことはしないのだ...!」
でぇじょうぶ博士
「天才エリートほど自炊できないと生きていけない時代でやんすよ。外食費をケチって投資に回すのが、現代の賢い生き方でやんす。」
でぇじょうぶ博士
「じゃあ結局、君塚が恋しくなるループに入るだけでやんすね。300円でお腹を満たせた幸せな時代は、もう戻ってこないでやんす。」
ずん
「うぅ...立ち食いそばよ永遠に...なのだ...。じゃあボク、池袋の再開発に反対するデモ起こすのだ!立ち食いそば復活運動なのだ!」
やきう
「お前一人でやるんか?しかも引きこもりのくせに外出するんか?」
ずん
「...やっぱりやめるのだ。家で袋麺食べるのだ。5食入り198円なのだ。これが真の勝ち組なのだ!」